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by 451books

カテゴリ:建築・インテリア( 4 )

家、住吉の長屋

d0137603_13135358.jpg昨年(2008年)10月にGALLERY・MA(東京)で行われた「安藤忠雄建築展」。
一番の目玉は、なんと言っても「住吉の長屋」原寸模型。一般の方の住宅のため、内部を見学することはほとんど不可能なので、模型とはいえ、訪れることの出来た方、羨ましいです。
この「安藤忠雄建築展」、2009年2月から大阪でも開催される(原寸模型ではなく、1/10模型)そうで、未見の方はぜひ。


d0137603_13143659.jpg451ブックスで紹介できるのは、原寸模型はとうてい無理。
写真の単行本、「家1969→1996」は、そのまま立てて置くとおおよそ1/30のファサードの模型になってくれます。

「住吉の長屋」は、安藤忠雄の初期の代表作、かつ今でも問題作。
3軒長屋の真ん中を取り壊して建て替えた、コンクリート打ち放し2階建ての住宅です。


d0137603_13182398.jpg屋根のない、中庭が中央に配置され、その中庭に挟まれた居室を行き来するためには、中庭という屋外を通らないと辿り着けない構造。

雨が降っていると、寝室からトイレに行くのに傘が必要という、現代の住宅の価値観から真っ向から対峙する住宅が、「住吉の長屋」です。


d0137603_13165041.jpg1階部分も、2階の渡り廊下のおかげで、かろうじて雨には当たりませんが、屋外であることに変わりはありません。

でも、ここに現代の住宅に失われてしまったモノを感じることが出来るとすると、「住吉の長屋」は、自然と共棲する最高の住処になるのかもしれません。


d0137603_13412036.jpgオープンカーのように屋根のないクルマが、他のクルマとは、全く別の楽しみがあるように、風や、気温、空や、太陽、そして四季を肌で感じることが、住まいでも出来るということです。

平面図を見てもシンプルなプラン。縦(あるいは横)に長い長方形を3分割して、中央部分をオープンな中庭にすることによって、「住吉の長屋」はできあがっています。


d0137603_13425326.jpg実は、Google Mapで「住吉の長屋」を探して、少し疑問に思うことがありました。
そして、辿り着いたのが、収録されていたこの写真。事実はわかったけど、その理由を考えると夜も眠れないかもしれません。

原寸模型は平面図のまま作られているようで、「家1969→1996」は、一般の書店では現在在庫切れ、手に入れるには今しかないのかもしれません。
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by 451books | 2009-01-15 16:12 | 建築・インテリア | Comments(4)
d0137603_1933575.jpg専門学校で建築を教えていた頃、テキストを選ぶことも重要な仕事でした。教えるために作られたテキストというのは高校生ぐらいまでしか無いので、良い本があっても、なにか工夫を考えないとただ読むだけの危険ことになってしまうのです。

d0137603_206134.jpg「机の上じゃない、現場で起きているんだ!」というようなセリフ、もちろん建築もそうなので、やっぱり現場に見に行かないと始まりません。
といって、日本だけでなく地球に散在する良い建築を見に廻るには物理的に難しいのも事実です。そこで本やビデオの出番で、巨匠といわれる建築家から、一般の住宅まで美しい写真を掲載されたモノが、今ではたくさん出版されています。

d0137603_20505344.jpg今は絶版になってしまいましたが、ヘンリィ・プラマー著「日本建築における光と影」を教科書に使っていました。安藤忠雄の建築を始め、モノクロームの美しい写真が豊富に掲載された、写真集を見ているような美しい本です。建築が美しいということを知ってもらうこと、それも目的のひとつでしたが、別の使い方があったのです。

d0137603_210932.jpgただ、漫然と見ているだけでは綺麗で終わってしまいがちです。建築をするからには、図面が読めないことには、何も始まらないことに気が付くと思います。そこで、「日本建築における光と影」に紹介されている建築の平面図を入手して、各ページの写真はどこから撮影しているのかを探させたのです。最初はかなり難しいのですが、写真を見るのではなくて読めるようになると、図面と写真がだんだん一致してきます。その中で、空間を図面に表現する方法をつかむことを目的としていたのです。

d0137603_2145564.jpgこの方法を続けていると、写真と図面を見ながら、建物の中を歩くことが出来てきます。実は、建築本の楽しみは、美しい写真を見るだけではなくて、遠く離れた建築の中を今ここにあるように歩くことができることなのです。

d0137603_21233592.jpg今回紹介している本は、「Walking through Le Corbusier(ウォーキングスルー ル・コルビュジエ)」です。この本は、ウォーキングスルーとタイトルに付いているように、コルビュジエの建物の中や外を歩くように作られているのです。ごくごく初期の住宅から、サヴォワ邸、スイス学生会館、ユニテ・ダビタシオン、トゥルーレット修道院等々の美しい写真が掲載されています。そして、建築を歩くためにそれぞれ平面図が添えられ、その平面図には、写真の立ち位置と視線の方向が記入されているのです。

d0137603_21251881.jpg写真と図面を読むことが全てのこの本、説明は全て英語ですが、説明が読めなくても、コルビュジエの建物の中を歩くことのできてきます。
いちど、じっくりと眺めて、写真と図面を読んでもらいたいと思える本、建築の勉強をしたことのない人にこそ、一度体験してもらいたい世界です。


451ブックス商品ページ → ウォーキングスルー ル・コルビュジエ
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by 451books | 2008-02-15 21:42 | 建築・インテリア | Comments(0)
先日、「大人が泣ける洋画ランキング」を行っているテレビ番組を見ましたが、1位は「タイタニック」でした。「ドリームガールズ」がランキングに入っていないのが確かに残念。
「マイ・アーキテクト」も入っていませんでしたが、建築好きなら間違いなく1位ではないかと思っています。
d0137603_12464099.jpg映画は、巨匠と呼ばれた建築家の「父」と、30年近く経ってその姿を見つめる「息子」のドキュメンタリーです。かっこ付きなのは各々に事情があるからです。
映画の最後に子供たち4人が、カーンの設計した住宅「ノーマン・フィッシャー邸」にて語り合うシーンが映画的にはもっとも感動するシーンとして締められているように思いますが、カーンが設計した「アメリカ吹奏楽団のための船」の船長兼指揮者のロバート・ブードローに「息子」出会うシーンがもっとも印象的でした。

d0137603_16403910.jpgルイス・カーンの建築や、その建築を愛する人たちや思い、カーン自身を見ることの出来る映画です。
写真は、「Louis Kahn to Anne Tyng(ルイス・カーンからアン・ティンへの手紙)」洋書ハードカバー。
建築においてもパートナーであったアン・ティンが、ローマに滞在していた1953年から1954年の間、ルイス・カーンが彼女に宛てた手紙の記録です。彼女自身の生い立ちや、カーンとの建築プロジェクトに関する多くの記述、絵や図面が掲載されています。
d0137603_1342575.jpgアンが映画の中でも憂いていた「トレントン・バス・ハウス」(二人での最初の仕事です)。この本の中でも在りし日の写真や、図面が紹介されています。映画で紹介されている状況と比較すると、平面的にも変更されているようですし、本来のオープンなイメージを画面では全く感じなかったので、なぜ彼女が憂いていたのか少しわかる気がします。

d0137603_1532647.jpg本には、手紙そのものも一部紹介されています。カーンが簡単に図面を書いて、彼女に説明をしています。写真は計画中の住宅で、24feet(約7.3m)×24feetの矩形を基本に展開し、煉瓦と木を組み合わせて、宅地内の植樹との調和を図ることを読み取ることが出来ます。平面での×マークは樹木です。

d0137603_15584180.jpgこの写真は、アン・ティンがハーバード大学(建築専攻)に在学中、近くのチャールズ川にて撮影されています。彼女の誕生から現在までの半生が紹介されていますが、彼女が在学中にデザインしたなかなか興味深い椅子の写真や、家族写真もあります。その他、カーンの生涯も写真で紹介されており、若い頃(1928年頃9のパスポートの写真なども見ることが出来、「マイ・アーキテクト」でのエピソードを思い出させてくれます。
事務所で働く姿の二人の写真も幾つかあり、当時のカーンの事務所の様子や働く様子がうかがえます。彼女が現場で指示を出しているような写真もありました。

d0137603_16101567.jpg基本的には、カーンが、彼女に出した私信なので、なかなか読みづらい部分も多いのですが、(もちろん英語です)手紙そのままの画像だけでなく、テキストに全文直して掲載してあるので、カーンの描いたスケッチを見ながら読み進めていくことが出来ますが、写真のように、With lots and lots of love Lou XXXXXXXXのように書かれていたりします。

d0137603_134889.jpg本の最後に載せられているカーンとアンの肖像画は、カーンの手によるスケッチ(片方は自画像ですね)です。上手なことはもちろん、建築家が手を動かすことを日常的に行い、大事に思っていたことも、そしてカーンとアンが建築をこよなく愛していたことが、よくわかる1冊です。


451ブックス商品ページ → ルイス・カーンからアン・ティンへの手紙
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by 451books | 2008-01-19 16:44 | 建築・インテリア | Comments(0)

猫の建築家

d0137603_1842731.jpgネットの古本屋にとって、「猫の手も借りたい」のは、買取りの書籍を仕分けしてる時?未発送の商品が山積みになっている時?だったり、猫に古本屋がつきものだったりする訳です。
そんな訳で、451ブックスの大切な本も猫がらみな「猫の建築家」です。
この本、ミステリィ作家「森博嗣」さんが、イラストレーター「佐久間真人」さんが描いた、猫と建築の絵に文章を添えています。文庫版も発売されていますが、やはりお薦めは単行本。絵の大きさも異なるし、モノとしてハードカバーな単行本が、モノにこだわった作品にしっくりときます。


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ここに登場する猫は、「美」の意味を問いながら街を彷徨します。
この絵本では、彼は鑑賞者であっても創造者ではありません。
しかし・・・



ーしかし、目的もなくむやみに出歩いたりはしなかった。

まず、「思慮」が必要であることを猫は知っている。

造られるべき「形」とはどのようなものか、
あるいは、
造られるべき「機能」とは何であるか。

遠くを見据えるように、じっと考える。
目を細め、背中を丸めて、考える。

ー以上 引用「猫の建築家」

一枚一枚の絵がエアコンの室外機や、樋、電線、縁石まで、精緻に描かれ(ペンに水彩かな)、少し古い路面電車と少し古いコンクリート建築が登場します。
もちろん、建築家な猫も。
時や場所を変え、その猫が街を建築的な思考を持って彷徨します。



d0137603_18434030.jpg「なぜ、この形を選んで、なぜ造ったのか」
「この形の機能は、何を表しているのか」
「建築の美は、どこに宿っているのか」

街を歩いている猫がふと立ち止まって、何かを見ているように感じるときがあります。
窓から外を眺めている猫は、何を見ているのか。
その目線の先にもしかしたら、建築か内と外や機能の意味を考えさせるモノがあるかもしれません。
その時、もしかしたら建築家を名乗ることが許される本が、この「猫の建築家」のような気がします。
451ブックス、お薦めの一冊です。
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by 451books | 2007-12-27 19:12 | 建築・インテリア | Comments(2)